去勢抵抗性前立腺がん・骨転移について
去勢抵抗性前立腺がんとは
男性ホルモンの分泌を抑える治療(手術療法やホルモン療法)を実施しても病状が悪化する前立腺がんのことを「去勢抵抗性前立腺がん」といいます。
もともと前立腺がんは、男性ホルモンによって増殖する性質があります。この性質を利用して、男性ホルモンの分泌や働きを抑えることにより、がん細胞の増殖を抑制する治療法がホルモン療法です。
ホルモン療法は有効性が高く、遠隔転移を有する前立腺がんの第一選択の治療法として広く行われていますが、ホルモン療法を続けるうちに効果がなくなり、再び病状が悪化することがあります。この状態が「去勢抵抗性前立腺がん」です。
医学的には「男性ホルモンを抑える治療(手術療法やホルモン療法)が行われ、血液中の男性ホルモン(血清テストステロン)の値が50ng/dL未満と非常に低いにもかかわらず、病勢が悪化したり、腫瘍マーカーであるPSAの値が上昇している状態」と定義されています1)。
男性ホルモンを抑える治療(手術療法やホルモン療法)が行われ、血液中の男性ホルモン(血清テストステロン)の値が50ng/dL未満と非常に低いにもかかわらず、病勢が悪化したり、腫瘍マーカーであるPSAの値が上昇している状態
1)前立腺癌取扱い規約 第4版、2010年12月をもとに作成
前立腺がんの骨転移が起こりやすい部位
前立腺がんは、進行すると骨に転移しやすく、去勢抵抗性前立腺がんにおいては、およそ80%もの高い頻度で骨転移が起こることが知られています。
転移が起こりやすい部位は、脊椎、肋骨、骨盤、大腿骨など、からだの中心付近にある骨です。
骨転移治療ハンドブック. 金原出版.2004.
細井孝之ほか編: 前立腺癌と男性骨粗鬆症-最新管理マニュアル. 医学図書出版.2013.
骨転移の主な症状
骨にがん細胞が転移しても、初期では症状がほとんどないため、すぐに気づかれることはありません。
しかし、病気が進行すると、がん細胞が骨の中の神経を刺激したり、脊髄など周囲の組織を圧迫することで、痛みやしびれ、まひなどが起こりやすくなります。また、転移した場所の骨がもろくなることで、少しの力がかかるだけで骨折しやすくなります(病的骨折)。
さらに、骨のカルシウムが血液に流れ出す「高カルシウム血症」が起こると、食欲不振、吐き気、倦怠感、多尿、意識障害などの症状がみられることがあります。
日本臨床腫瘍学会編: 骨転移診療ガイドライン.南江堂.2015.
癌と骨病変. メディカルレビュー社.2004.
前立腺癌のすべて.メジカルビュ—社.2011.
Ursavas A,et al.: Ann Thorac Med 2007: 2; 9-13.
Hopkins GB,et al.: West J Med 1974: 120; 448-451.
早期治療が大切なわけ
骨転移に伴うこうした症状は、患者さんの生活の質(QOL)を大きく低下させる原因になるばかりでなく、生存期間にも影響を及ぼすリスク要因となります1)2)。
このため、できるだけ早い段階から適切な治療を始めて、病気の進行や症状を抑えることが大切です。
これまでの骨転移に対する治療は、症状の出現を遅らせたり、症状を和らげることが中心でしたが、最近は、去勢抵抗性前立腺がんに対する新しい治療薬が登場したことで、症状の緩和に加え、生存期間の延長も目指せるようになりました。
1) Soloway MS et al., Cancer 1988:61(1):195-202
2) Kazuo Yamashita et al., Cancer 1993: 71(4):1297-1302